「愛犬の皮膚や毛並みが気になる」「シニア期の健康を食事から支えたい」と考え、犬にDHA・EPAを与えると、どのような効果が期待できるのか調べている方も多いのではないでしょうか。
DHAとEPAは、魚の脂などに含まれるオメガ3脂肪酸です。人間向けの健康食品でよく知られていますが、犬の皮膚・被毛や関節、成長期の脳・視覚などにも関係する栄養素として研究されています。
一方で、「体に良さそうだから多く与えればよい」というものではありません。普段のドッグフードに含まれる量や犬の年齢、健康状態を確認し、過剰摂取や脂質の酸化にも注意する必要があります。
犬は植物由来のα-リノレン酸からEPAなどを作ることができますが、その変換効率は限定的です。DHA・EPAを確実に補いたい場合は、最初からDHA・EPAを含む原料を選ぶ方が効率的と考えられます。
この記事でわかること
- 犬のDHA・EPAに期待される効果
- DHA・EPAとα-リノレン酸の違い
- 犬の体内におけるオメガ3脂肪酸の変換
- AAFCO・FEDIAF基準を踏まえた摂取量の考え方
- 青魚以外からDHA・EPAを摂取する方法
- 過剰摂取や酸化を防ぐための注意点
※大切な注意点
本記事は犬の栄養に関する一般的な情報を紹介するもので、診断や治療を目的としたものではありません。持病がある犬、薬を服用している犬、療法食を利用している犬へDHA・EPAを追加する場合は、事前に獣医師へ相談してください。
犬にもDHA・EPAは必要?
DHA・EPAは、犬の体を構成したり、正常な働きを支えたりする脂肪酸の一種です。ただし、必要性や摂取量の考え方は、子犬と成犬、健康な犬と治療中の犬で異なります。
まずはDHA・EPAがどのような栄養素なのか、ほかのオメガ3脂肪酸との違いから確認しましょう。
DHA・EPAはオメガ3脂肪酸の一種
脂肪酸は、犬が活動するためのエネルギー源になるほか、細胞膜や生理活性物質を構成する材料としても利用されます。そのなかで、炭素の結合構造によって分類されたものの一つが「オメガ3脂肪酸」です。
| 種類 | 主な特徴 | 主な供給源 |
|---|---|---|
| DHA | 脳や網膜などを構成する脂肪酸 | 魚油、オキアミ、藻類由来オイルなど |
| EPA | 炎症反応の調整に関わる脂肪酸 | 魚油、オキアミ、藻類由来オイルなど |
| ALA α-リノレン酸 |
体内でEPAなどを合成する際の材料になる脂肪酸 | 亜麻仁油、えごま油、チアシードなど |
これらはすべてオメガ3脂肪酸ですが、ALAを摂取することと、DHA・EPAを直接摂取することは同じではありません。ドッグフードのパッケージに「オメガ3配合」と書かれていても、どの種類がどれだけ含まれているのか確認することが大切です。
チェックポイント
原材料に亜麻仁や亜麻仁油が使われていても、それだけで十分なDHA・EPAを摂取できるとは限りません。「オメガ3脂肪酸の総量」だけでなく、DHA・EPAが個別に表示されているか確認しましょう。
成長期と成犬では必要性の考え方が異なる
成長期の子犬にとって、DHAは脳や視覚の正常な発達を支える重要な栄養素です。AAFCOやFEDIAFの栄養基準でも、成長期・繁殖期の犬用フードについてEPAとDHAを合わせた最低値が示されています。
一方、健康な成犬については、EPA+DHAの明確な最低摂取量が設定されていません。これは「成犬には必要ない」という意味ではなく、すべての健康な成犬へ共通して推奨できる特定量を定めるには、現時点で情報が十分ではないということです。
| 対象 | EPA+DHAの考え方 |
|---|---|
| 成長期・繁殖期 | 乾物中0.05%、または1,000kcal当たり約0.13gが最低推奨レベルの目安 |
| 健康な成犬 | すべての成犬に共通する明確な最低量は設定されていない |
| 疾患のある犬 | 目的や病状によって必要量が異なるため、獣医師の判断が必要 |
参考:FEDIAF Nutritional Guidelines 2024
注意:基準表の数値はフードの栄養設計に使われる値です。サプリメントとして毎日追加すべき量を示したものではありません。
犬のDHA・EPAに期待される5つの効果
犬のDHA・EPAは、特定の病気を必ず予防したり治したりする成分ではありません。しかし、適切な食事の一部として摂取することで、皮膚や関節、成長期の脳・視覚などの健康維持を支える可能性があります。
ここからは、犬を対象とした研究や獣医栄養学で注目されている働きを見ていきましょう。
1.皮膚と被毛の健康維持をサポートする
DHA・EPAを含むオメガ3脂肪酸は、犬の皮膚や被毛の健康維持に関わっています。皮膚は外部の刺激から体を守る大切な組織であり、食事から摂取する脂肪酸の種類やバランスにも影響を受けます。
毛並みの悪い犬24頭を対象にした研究では、EPA160mgとDHA100mgを90日間与えたグループで、皮膚や毛艶に関する評価の改善が報告されました。ただし、すべての犬に同じ量が適しているとは限らず、この研究結果を家庭での投与量としてそのまま使用することはできません。
参考:日本脂質栄養学会「オメガ3系脂肪酸のサプリメントで犬の毛艶がよくなる」
2.関節の健康維持に役立つ可能性がある
EPAは、体内で作られる炎症に関係する物質のバランスに関わっています。そのため、年齢とともに関節の動きが気になり始めた犬や、関節に負担がかかりやすい犬種の栄養管理で注目されている成分です。
ただし、EPAを摂取すれば関節疾患が治るわけではありません。歩き方の変化、立ち上がりにくさ、散歩を嫌がるといった症状がある場合は、サプリメントを試す前に動物病院で原因を確認しましょう。
3.子犬の脳と視覚の発達を支える
DHAは脳や網膜を構成する脂肪酸の一つです。特に成長期の子犬では、神経系や視覚機能が発達する時期の栄養素として重要視されています。
成長期・繁殖期のフードにDHA・EPAの最低基準が設けられているのも、この時期の正常な発達を支える必要があるためです。子犬用フードを選ぶ際は、単に「魚配合」と書かれているかではなく、総合栄養食として成長期の基準を満たしているか確認してください。
4.シニア犬の健康管理を支える
シニア犬になると、皮膚・関節・認知機能など、さまざまな変化が現れやすくなります。DHA・EPAは、こうした加齢に伴う健康課題を食事面から支える成分として研究されています。
ただし、シニア犬は肝臓や腎臓、膵臓などに持病を抱えている場合も少なくありません。脂質を追加することで消化器へ負担がかかる可能性もあるため、年齢だけを理由にサプリメントを始めないことが大切です。
5.炎症反応の調整に関わる
EPAからは、体内の炎症反応を調整する物質が作られます。オメガ6脂肪酸から作られる物質とは異なる働きを持つため、EPAの量だけでなく、食事全体におけるオメガ6とオメガ3のバランスも重要です。
オメガ6も犬の皮膚や体の正常な働きに欠かせない栄養素であり、悪い脂肪酸ではありません。どちらか一方を極端に減らすのではなく、主食となるフードを基本に食事全体を整えましょう。
愛犬の食事は「一つの栄養素」だけで決まりません
DHA・EPAだけでなく、たんぱく質や脂質、ミネラルなどを含めた食事全体のバランスが大切です。高たんぱく・低脂肪な食材として注目される鹿肉の栄養や、牛肉・豚肉・鶏肉との違いは、以下の記事で詳しく解説しています。
【完全版】鹿肉ドッグフードのメリット・デメリット!栄養素を他のお肉と徹底比較 →※鹿肉は良質なたんぱく質源ですが、一般的な鹿肉をDHA・EPAの主要な供給源として考えることはできません。
犬は植物性オメガ3からDHA・EPAを作れる?
亜麻仁油やえごま油には、植物性のオメガ3脂肪酸であるALAが多く含まれています。犬はALAを体内で変換し、EPAなどの長鎖オメガ3脂肪酸を作ることが可能です。
しかし、その変換能力には限りがあります。さらに、犬で信頼できる一律の変換率は確立されておらず、犬種や個体差、食事に含まれるほかの脂肪酸などによっても変わると考えられています。
ALAからEPA・DHAへの変換効率は限定的
ALAがEPAやDHAへ変換される過程では、複数の酵素が必要になります。ところが、これらの酵素はオメガ6脂肪酸の代謝にも使われるため、食事中の脂肪酸構成によって変換のされやすさが変わります。
犬20頭を対象とした6週間の比較研究では、DHA・EPAを含むオキアミ油を与えたグループで赤血球中のEPA・DHAが増加しました。一方、ほぼ同程度のALAを亜麻仁油から与えたグループでは、EPA・DHAの増加が確認されていません。
また、45頭の犬にオキアミ、魚粉・魚油、アマニを4週間与えた別の研究でも、血中のEPAとDHAの状態を示すOmega-3 Indexは、オキアミや魚由来原料の方がアマニより大きく上昇しました。
ファクトチェック結果
「犬はALAの○%をEPAへ、○%をDHAへ変換する」と断定できる、統一された変換率は確認されていません。この記事では、研究結果に基づいて「一部は変換できるものの、効率は限定的」と表現しています。
参考:犬における長鎖・短鎖オメガ3脂肪酸の比較研究
参考:日本脂質栄養学会「イヌのOmega-3 Index」
ここまでのポイント
- DHA・EPAは犬の皮膚、被毛、関節、脳、視覚などの健康維持に関わる
- 成長期・繁殖期にはEPA+DHAの最低推奨レベルが示されている
- 健康な成犬には一律の最低摂取量が設定されていない
- 犬はALAをEPAなどへ変換できるが、その効率は限定的
- DHA・EPAを補うなら、含有量と供給源を確認することが大切
では、青魚をそのまま与えることが難しい場合、どのような食材や製品からDHA・EPAを摂取できるのでしょうか。次のパートでは、青魚以外の供給源やAAFCO・FEDIAF基準に基づく摂取量の考え方を詳しく解説します。
青魚以外から犬がDHA・EPAを摂取する方法
DHA・EPAと聞くと、サバやイワシなどの青魚を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、犬に青魚をそのまま与える方法だけが、DHA・EPAを摂取する手段ではありません。
魚のにおいを嫌がる犬や、骨を取り除く手間を減らしたい飼い主には、オキアミ、藻類由来オイル、精製された犬用フィッシュオイル、DHA・EPA配合フードなどが選択肢になります。
「青魚以外」の意味に注意
魚そのものを食べさせたくない場合と、魚由来の原料を完全に避けたい場合では、選ぶべき商品が異なります。魚油は青魚の身を与えずに利用できますが、原料自体は魚由来です。魚由来成分も避けたい場合は、藻類由来オイルなどを検討しましょう。
| 供給源 | 主に含まれる成分 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| オキアミ | EPA・DHA | EPA・DHAを直接摂取できる | 甲殻類由来。アレルギーや製品ごとの含有量を確認 |
| 藻類由来オイル | 主にDHA 製品によりEPA |
魚由来原料を避けたい場合の候補 | DHAのみの製品もあるため成分表示を確認 |
| 犬用フィッシュオイル | EPA・DHA | フードへ加えやすく、量を調整しやすい | 魚由来。酸化や過剰摂取に注意 |
| DHA・EPA配合フード | 製品により異なる | 毎日の主食から継続しやすい | 「オメガ3」だけでなくEPA・DHA量を確認 |
| 亜麻仁油・えごま油 | ALA | 植物由来のオメガ3脂肪酸源 | DHA・EPAを直接含むとは限らない |
オキアミ由来のオイルやミール
オキアミは海に生息する小型の甲殻類で、EPAとDHAを含んでいます。オキアミ由来の原料には、オイルやミールなどの形があり、犬用フードやサプリメントにも利用されています。
日本脂質栄養学会が紹介している45頭の犬を対象とした研究では、オキアミミール、魚粉・魚油、アマニミールを4週間与えて比較しました。その結果、赤血球中のEPAとDHAの割合を示すOmega-3 Indexは、3種類すべてで上昇したものの、オキアミミールを与えたグループで最も大きく増えています。
研究結果の読み方
この結果は、オキアミを与えればすべての犬に同じ健康効果が現れることを保証するものではありません。研究期間は4週間であり、Omega-3 Indexの変化を確認したものです。病気の予防や治療効果まで証明した研究ではない点にも注意しましょう。
参考:日本脂質栄養学会「イヌのOmega-3 Indexを高めるために有効なオメガ3系脂肪酸源は?」
なお、オキアミは魚ではありませんが、甲殻類に分類されます。食物アレルギーが疑われる犬や、これまで甲殻類由来の食品を食べたことがない犬に与える場合は、原材料を確認したうえで慎重に判断してください。
藻類由来のDHA・EPAオイル
海で暮らす微細藻類のなかには、DHAやEPAを作り出すものがあります。魚は食物連鎖を通じてこれらの成分を取り込むため、藻類はDHA・EPAの起点となる供給源の一つです。
藻類由来オイルは、魚の身や魚油を使用せずにDHA・EPAを摂取したい場合の候補になります。ただし、すべての藻類オイルにEPAとDHAの両方が含まれているわけではありません。
- DHAを中心に配合した製品
- EPAとDHAの両方を含む製品
- 人間用として濃度や添加物が設計された製品
このように製品ごとの差があるため、パッケージの「藻類由来」や「オメガ3」という言葉だけで判断せず、1回分に含まれるEPAとDHAの量を個別に確認しましょう。
精製された犬用フィッシュオイル
青魚を調理して与える代わりに、犬用として販売されているフィッシュオイルを利用する方法もあります。液体、ポンプ式、カプセルなどがあり、普段のフードへ加えやすい点が特徴です。
ただし、フィッシュオイルは脂質であり、高カロリーです。さらに、商品によってEPA・DHA濃度が異なるため、「小さじ1杯」「1カプセル」といった見た目だけでは適切な量を判断できません。
確認するのは「魚油の総量」ではありません
商品に「フィッシュオイル1,000mg」と書かれていても、そのすべてがDHA・EPAとは限りません。EPA○mg、DHA○mgという個別の表示を確認し、両方を合計して考えましょう。
人間用のフィッシュオイルには、犬に不要な香料や甘味料などが使われている場合があります。犬へ利用するなら、原則として犬用に設計され、EPA・DHAの含有量や給与方法が明記された商品を選ぶ方が安心です。
DHA・EPAを配合した総合栄養食
サプリメントを追加せず、毎日の主食からDHA・EPAを摂取する方法もあります。犬の年齢や成長段階に合った総合栄養食であれば、DHA・EPAだけでなく、たんぱく質やミネラル、ビタミンなども含めて栄養バランスが設計されています。
特に子犬の場合は、自己流でオイルを追加するよりも、成長期用の栄養基準を満たした総合栄養食を選ぶことが基本です。
フード選びで確認したい4項目
- 愛犬のライフステージに合った総合栄養食か
- EPAとDHAが個別または合計で表示されているか
- 魚油、オキアミ、藻類など供給源が明確か
- 給与量を守った場合の摂取カロリーが適切か
犬用サプリメント
主食を変更しにくい場合は、犬用サプリメントを使ってDHA・EPAを補う方法があります。必要量を調整しやすい一方、主食にもDHA・EPAが含まれている場合は、知らないうちに合計摂取量が増える可能性も否定できません。
関節疾患や皮膚疾患などに対して研究される量は、健康維持を目的とした一般的な量とは異なります。インターネット上で見つけた「治療量」を自己判断で与えず、獣医師へ現在のフード名とサプリメントの商品情報を伝えて相談してください。
選ぶときの結論
植物由来にこだわる場合は藻類由来オイル、魚を調理せずに与えたい場合は犬用フィッシュオイル、毎日の管理を簡単にしたい場合はDHA・EPA配合の総合栄養食が候補です。原料名だけでなく、EPA・DHAの実際の含有量まで確認しましょう。
犬に与えるDHA・EPAの摂取目安
犬に必要なDHA・EPAの量を調べると、体重別の数字や病気ごとの投与量など、さまざまな情報が見つかります。しかし、それらの数字は目的や出典が異なるため、同じ「おすすめ量」として扱うことはできません。
まず理解しておきたいのは、フードの最低栄養基準、健康維持の目安、治療を補助するための量、安全性を考える上限量は、それぞれ意味が異なるという点です。
| 数字の種類 | 意味 | 家庭での扱い |
|---|---|---|
| 最低推奨レベル | フードの栄養設計で最低限確保したい水準 | サプリメントの追加量とは異なる |
| 健康維持量 | 健康な犬の栄養状態を維持するための考え方 | 成犬では統一された明確な最低量がない |
| 治療目的の量 | 特定の疾患に対して研究・使用される量 | 獣医師の管理下で検討する |
| 安全上限量 | 健康への悪影響を避けるための上限の考え方 | 毎日目指す摂取量ではない |
AAFCO・FEDIAF基準は成長期と繁殖期が中心
AAFCOの犬用栄養基準では、成長期・繁殖期の犬用フードについて、EPA+DHAを乾物中0.05%以上とする最低値が示されています。FEDIAFの2024年版ガイドラインでも、成長期・繁殖期の最低推奨レベルは乾物100g当たり0.05gです。
エネルギー量を基準にしたFEDIAFの値では、EPA+DHAは1,000kcal当たり0.13g、つまり130mg/1,000kcalとなります。
数値を愛犬の体重へ単純換算しない
この130mgは「すべての犬に毎日130mgのサプリメントを追加する」という意味ではありません。フード全体1,000kcalに含まれる最低推奨量であり、主食から摂取している分も含まれます。
参考:FEDIAF Nutritional Guidelines 2024
健康な成犬に一律の最低量は設定されていない
健康な成犬については、AAFCO・FEDIAFともにEPA+DHAの明確な最低推奨量を設定していません。FEDIAFは、成犬におけるオメガ3脂肪酸の有益性を示す研究が増えている一方、特定の量を推奨するには情報が不十分であると説明しています。
そのため、愛犬の体重だけを入力して算出した数字を、すべての成犬に共通する「正解」と考えるのは適切ではありません。次の情報をまとめて判断する必要があります。
- 現在与えているフードの種類と1日の給与量
- フードに含まれるEPA・DHAの量
- 犬の年齢、体重、運動量
- 皮膚、関節、腎臓などの健康状態
- ほかのサプリメントや薬の使用状況
安全上限量は「目標量」ではない
NRCの資料に基づくEPA+DHAの安全上限として、1,000kcal当たり2.8gという数値が獣医栄養関連資料で紹介されています。これは2,800mg/1,000kcalに相当します。
ただし、この数値は健康効果を高めるために毎日摂取すべき目標量ではありません。安全性を検討する際の上限であり、最低推奨レベルとは意味が大きく異なります。
上限まで与える必要はありません
「上限を超えていなければ、多いほど効果的」とは限りません。犬の健康状態や食事内容によっては、上限より少ない量でも下痢、嘔吐、体重増加などが起こる可能性があります。
体重だけでなく1日の摂取カロリーも確認する
AAFCOやFEDIAFの基準は、乾物量や摂取エネルギーを基準に示されています。同じ体重の犬でも、年齢、避妊・去勢の有無、運動量、体格によって1日に必要なカロリーは異なるためです。
また、ドライフードとウェットフードでは水分量が大きく異なります。「フード100g当たり」の表示だけを比べると、実際の栄養濃度を正確に比較できない場合があります。
追加前に確認する順番
- 主食のパッケージでEPA・DHA含有量を探す
- 愛犬が実際に食べている1日量を確認する
- おやつや別のサプリメントに含まれる量も加える
- 追加が必要か獣医師またはメーカーへ相談する
DHA・EPA配合商品を選ぶときのチェックポイント
犬用のオメガ3商品には、フード、オイル、カプセル、粉末など多くの種類があります。パッケージの目立つ場所に「高濃度」「天然」「オメガ3配合」と書かれていても、それだけで愛犬に適した商品とは判断できません。
EPAとDHAの含有量が明記されているか
最初に確認したいのは、EPAとDHAそれぞれの含有量です。「オメガ3脂肪酸○mg」という表示だけでは、ALA、EPA、DHAの内訳がわかりません。
また、ボトル全体の含有量と1回分の含有量を混同しないようにしましょう。液体タイプの場合は、1プッシュまたは1ml当たりのEPA・DHA量まで確認すると、1日の摂取量を管理しやすくなります。
原料の種類と由来が確認できるか
魚油と記載されていても、使用されている魚種や漁獲地域、精製方法などの情報量は商品によって異なります。魚由来原料を避けたい場合は、藻類由来であることに加え、製造工程で魚由来成分が使われていないかもメーカーへ確認すると安心です。
オキアミ由来の商品は甲殻類、魚油は魚由来であるため、食物アレルギーが疑われる犬には慎重な判断が求められます。
保存方法と賞味期限が明確か
DHA・EPAを含む多価不飽和脂肪酸は、光や熱、酸素の影響を受けて酸化しやすい性質があります。そのため、購入時の品質だけでなく、開封後の保存方法も重要です。
- 遮光性や密閉性のある容器か
- 開封後の保存温度が記載されているか
- 開封後に使い切る期間が明確か
- 愛犬の使用量に対して容器が大きすぎないか
小型犬に大容量のボトルを購入すると、使い切るまでの期間が長くなり、開閉によって酸素へ触れる回数も増えます。単純な価格だけで比べず、愛犬が品質を保ったまま使い切れる容量を選びましょう。
犬に不要な添加物が含まれていないか
人間用の商品には、風味を整えるための香料や甘味料などが使用されている場合があります。特に液体やグミ、味付きサプリメントは、原材料を細かく確認しなければなりません。
犬用の商品でも、原材料表示と添加物を確認し、愛犬にとって必要な成分をできるだけシンプルに摂取できるものを選びましょう。
ポイント
- 青魚以外では、オキアミ、藻類、犬用フィッシュオイルなどから摂取できる
- 魚由来原料まで避けたい場合は、藻類由来製品が候補になる
- AAFCO・FEDIAFの最低値は、主に成長期・繁殖期のフードを対象としている
- 健康な成犬に共通する明確な最低摂取量は設定されていない
- 安全上限量は、毎日目指す摂取量ではない
- 商品はEPA・DHA含有量、原料、保存方法まで確認する
DHA・EPAは愛犬の健康維持を支える可能性がある一方、脂質であることに変わりはありません。後半パートでは、酸化や過剰摂取によるリスク、与える前に獣医師へ相談したいケース、鹿肉を含めた食事全体の整え方を詳しく解説します。
犬にDHA・EPAを与える際の注意点
DHA・EPAは、適切に取り入れることで犬の健康維持を支える可能性があります。しかし、体に良い栄養素であっても、量や保存状態を気にせず与えてよいわけではありません。
特にフィッシュオイルや犬用サプリメントは、主食へ簡単に追加できるため、知らないうちに摂取量が多くなることがあります。愛犬へ与える前に、次の注意点を確認しましょう。
DHA・EPAを与える前の確認事項
- 普段のフードに含まれるEPA・DHA量を確認する
- 商品の推奨給与量を超えて与えない
- 開封後の保存方法と使用期限を守る
- 下痢、嘔吐、食欲などの変化を観察する
- 持病や服薬がある場合は獣医師へ相談する
酸化したオイルを与えない
DHA・EPAは不飽和度が高く、光や熱、酸素の影響を受けて酸化しやすい脂肪酸です。開封後のオイルを長期間放置したり、高温になる場所で保管したりすると、品質が低下する可能性があります。
商品に冷蔵保存の指示がある場合は、必ず従ってください。使用後は容器をすぐに密閉し、直射日光やコンロ付近などの高温になる場所を避けて保管しましょう。
| 確認項目 | チェックする内容 |
|---|---|
| 容器 | 遮光性や密閉性があるか |
| 保存温度 | 常温・冷暗所・冷蔵などの指定を守っているか |
| 開封日 | いつ開封したかわかるように記録しているか |
| におい・状態 | 開封時から不自然な変化がないか |
小型犬では、1回に使用する量が少なくなります。大容量の商品を長期間使い続けるよりも、品質を保ったまま使い切れる容量を選ぶ方が管理しやすいでしょう。
下痢や嘔吐などの消化器症状に注意する
フィッシュオイルなどの油脂を急に追加すると、便が軟らかくなったり、下痢や嘔吐が起きたりする場合があります。特に、脂質の多い食事に慣れていない犬へ一度に多く与えるのは避けましょう。
初めての商品を試すときは、メーカーが示す給与方法を確認してください。与えた後に便の状態、食欲、元気、皮膚の変化などを観察し、異常が現れた場合は使用を中止して動物病院へ相談します。
注意:下痢や嘔吐が続く、ぐったりしている、腹部を痛がる、食事を取れないといった場合は、サプリメントの使用だけで判断せず、速やかに獣医師の診察を受けてください。
脂質とカロリーの過剰摂取に注意する
DHA・EPAを含むオイルも脂質であり、1g当たり約9kcalのエネルギーを持ちます。毎日のフードにオイルを追加すれば、その分だけ摂取カロリーも増えることになります。
少量に見えても、体の小さな犬にとっては無視できないカロリーになる場合があります。長期間にわたって主食の量を変えずにオイルだけを追加すると、体重増加につながる可能性もあるでしょう。
体重と体型も定期的に確認
体重だけでなく、肋骨の触れやすさや腰のくびれなども確認しましょう。体重が増え続ける場合は、サプリメントだけでなく、主食やおやつを含めた総摂取カロリーの見直しが必要です。
血液凝固や服薬への影響を確認する
高用量のオメガ3脂肪酸は、血小板機能や血液凝固へ影響する可能性が指摘されています。健康な犬が適切な量を摂取する場合に過度に心配する必要はありませんが、自己判断による高用量投与は避けなければなりません。
血液凝固に関係する薬を服用している犬や、出血しやすい病気がある犬、手術を控えている犬には、DHA・EPAを追加する前に獣医師へ伝えてください。
- 現在服用している薬がある
- 出血が止まりにくいと指摘されたことがある
- 近日中に手術や処置を予定している
- 複数のサプリメントを併用している
すでに与えている場合は、商品名、1回量、1日の回数を獣医師へ伝えると確認がスムーズです。
膵炎や脂質代謝異常のある犬は自己判断で追加しない
膵炎の治療歴がある犬、高脂血症など脂質代謝に関する異常がある犬、脂肪を制限した療法食を利用している犬には、オイルの追加が適さない場合があります。
また、肝臓や腎臓の病気がある犬も、病状や治療内容によって食事管理が異なります。DHA・EPAに期待される働きだけを見て判断せず、現在の治療方針を優先してください。
獣医師への相談が必要な犬
持病がある犬、療法食を食べている犬、薬を服用している犬、手術を控えている犬、妊娠・授乳中の犬には、自己判断でDHA・EPAサプリメントを追加しないでください。
DHA・EPAだけでなく毎日の食事全体を整えよう
DHA・EPAは、犬の食事を構成する栄養素の一部です。DHA・EPAだけを十分に摂取しても、たんぱく質やビタミン、ミネラル、エネルギーが不足していれば、理想的な食事とはいえません。
愛犬の健康を食事から支えるためには、一つの成分だけを追いかけるのではなく、主食・おやつ・トッピングを含めた1日全体のバランスを確認することが重要です。
| 食事の要素 | 基本的な考え方 |
|---|---|
| 主食 | 年齢や健康状態に合った総合栄養食を基本にする |
| DHA・EPA | 主食からの摂取量を確認してから追加を検討する |
| おやつ | 与えすぎず、原材料やカロリーを確認する |
| トッピング | 主食の栄養バランスを大きく崩さない範囲で使う |
| 水分 | いつでも新鮮な水を飲める環境を整える |
主食は総合栄養食を基本にする
総合栄養食は、指定された成長段階の犬が、そのフードと水を基本に必要な栄養を摂取できるよう設計されています。子犬、成犬、シニア犬では必要なエネルギーや栄養バランスが異なるため、ライフステージに合った商品を選びましょう。
手作り食だけで必要な栄養素を満たすには、専門的な栄養設計が必要です。自己流で肉、野菜、オイルなどを組み合わせると、カルシウムや微量栄養素が不足する可能性があります。
おやつやトッピングは適量を守る
鹿肉ジャーキーをはじめとしたおやつやトッピングは、愛犬の食事の楽しみを増やしたり、食欲を刺激したりする際に役立ちます。しかし、量が多くなると、主食を食べなくなったり、1日の摂取カロリーが増えたりすることもあります。
一般的には、おやつから摂取するカロリーを1日に必要な総カロリーの10%以内に抑える考え方が利用されています。ただし、体重管理中の犬や療法食を食べている犬では、より厳しい制限が必要になる場合もあるでしょう。
食事記録をつけると管理しやすい
主食だけでなく、おやつ、トッピング、サプリメント、家族が与えた食べ物も記録しましょう。「少しずつ」の積み重ねによるカロリーオーバーを防ぎやすくなります。
良質なたんぱく質を補うなら獣道ラボの無添加鹿肉
犬の健康を支えるためには、DHA・EPAだけでなく、筋肉や皮膚、被毛などを構成するたんぱく質も欠かせません。毎日の主食を基本にしながら、愛犬が喜ぶ良質なおやつを選びたい方には、鹿肉も選択肢の一つです。
三重・伊賀の里山から届ける無添加鹿肉
獣道ジビエラボでは、三重の山で捕獲した鹿を、狩猟から解体・加工まで一貫して管理しています。大切な愛犬へ安心して与えられるよう、保存料や着色料などに頼らず、鹿肉本来の風味を活かした犬用おやつを製造しています。
- 猟師自らが捕獲から加工まで一貫管理
- 余計な添加物を使用しないシンプルな原材料
- 高たんぱくで脂質の量を管理しやすい赤身肉
- 有害鳥獣として捕獲された命を無駄にしない取り組み
鹿肉とDHA・EPAの役割は別に考えましょう
鹿肉は良質なたんぱく質を補うおやつとして活用できますが、一般的な鹿肉はDHA・EPAの主要な供給源ではありません。DHA・EPAは主食や適切なオイルなどから、おやつのたんぱく質は鹿肉などから補うように、それぞれの役割を分けて考えることが大切です。
また、鹿肉ジャーキーも総合栄養食ではなく、基本的にはおやつやトッピングとして利用する食品です。愛犬の体格や運動量に合わせて量を調整し、主食とのバランスを崩さない範囲で与えてください。
犬のDHA・EPAに関するよくある質問
最後に、犬へDHA・EPAを取り入れる際に飼い主が疑問を持ちやすいポイントへ回答します。
まとめ|犬のDHA・EPAは種類と摂取量を確認して取り入れよう
DHA・EPAは、犬の皮膚や被毛、関節、脳、視覚などの健康維持に関わるオメガ3脂肪酸です。特に成長期の子犬では、正常な脳や視覚の発達を支える栄養素として、AAFCOやFEDIAFのフード基準に最低推奨レベルが設けられています。
一方、健康な成犬については、すべての犬に共通する明確な最低摂取量が設定されているわけではありません。インターネット上の体重別一覧だけで判断せず、現在のフードから摂取している量や愛犬の健康状態を確認する必要があります。
亜麻仁油やえごま油に含まれるALAは、犬の体内で一部がEPAなどへ変換されます。しかし、その効率は限定的であり、犬に共通する一律の変換率も確立されていません。DHA・EPAを確実に摂取したい場合は、次の供給源を検討しましょう。
- オキアミ由来のオイルやミール
- 藻類由来のDHA・EPAオイル
- EPA・DHA量が明記された犬用フィッシュオイル
- DHA・EPAを配合した総合栄養食
- 獣医師の指導で使用する犬用サプリメント
DHA・EPAだけで犬の健康が決まるわけではありません。主食となる総合栄養食を基本に、良質なたんぱく質や適切なカロリー、水分なども含め、毎日の食事全体を整えることが大切です。
三重・伊賀の里山から
命を無駄にしない
愛犬のための無添加鹿肉
獣道ジビエラボは、猟師自らが捕獲から解体・加工まで一貫管理。愛犬の食事に良質なたんぱく質を取り入れたい方へ、素材を活かした鹿肉のおやつを届けています。
獣道ジビエラボを詳しく見る →参考資料
免責事項:本記事は、犬の栄養に関する一般的な情報の提供を目的としています。特定の病気の診断、予防、治療を目的とするものではありません。愛犬の健康状態や食事について不安がある場合は、かかりつけの獣医師へご相談ください。