増え続けるニホンジカによる農林業被害のリアルと有害駆除の課題

地域課題・ジビエのリアル|解説コラム

増え続けるニホンジカによる農林業被害のリアルと有害駆除の課題

なぜシカは増えすぎたのか?現場で起きている農家さんの悲鳴と「駆除後の廃棄問題」に迫る

日本の美しい山々や農村で、いま「ニホンジカの激増」による被害が深刻化しています。

ニュースなどで「害獣被害」という言葉を耳にすることはあっても、実際にどのような被害が出ているのか、そして駆除されたシカたちがその後どうなっているのかまでは知られていません。

三重県で狩猟・有害鳥獣駆除を生業とする現役ハンターの視点から、農林業被害の悲痛な現場と、駆除の裏に潜む「命の廃棄問題」のリアルをわかりやすく解説します。

1. なぜ日本の山で「ニホンジカ」が激増したのか?

かつては人里で見かけることが珍しかったニホンジカですが、ここ数十年でその生息数は爆発的に増加しました。主な要因は大きく3つあります。

① 天敵の不在と地球温暖化

日本狼(ニホンオオカミ)の絶滅により自然界の天敵がいなくなったこと、さらに冬の積雪量が減ったことで越冬できるシカが増えました。

② ハンター(狩猟者)の高齢化と減少

捕獲の担い手であるハンターの高齢化が進み、個体数を自然にコントロールすることが難しくなっています。

③ 里山の変化と餌の増加

過疎化によって人と山の境界線(耕作放棄地など)が曖昧になり、シカが人里近くまで降りてきやすくなりました。

2. 被害額は年間150億円超。農業と山林に与える絶大なダメージ

農林水産省の公表データによると、野生鳥獣による農作物被害額は毎年**約150億〜160億円**に上ります。その中で最も被害額が大きいのがニホンジカです。

🌾 現場で起きている2大被害

  • 農作物被害:丹精込めて育てたお米、野菜、果物が一夜にして食べ尽くされ、農家さんの営農意欲を奪う。
  • 森林破壊(生態系破壊):シカが木の皮(樹皮)を剥いで食べることで樹木が枯死。下草まで食べ尽くされることで大雨時に土砂崩れが起きやすくなる。

3. 有害鳥獣駆除の現実と「駆除された命」の行方

地域の農業と自然生態系を守るため、自治体や猟友会によって年間数十万頭のシカが「有害鳥獣」として捕獲・駆除されています。
しかし、ここに避けては通れない非常に辛い課題があります。

捕獲されたシカの運命

全体の約80%〜90%が活用されず埋設・焼却処分されている

解体施設の不足、解体処理にかかる人手やコストの壁、そして衛生管理の難しさから、捕獲された命の大部分が「ゴミ」として扱わざるを得ないのが現状です。

人里を守るために駆除することは不可避である一方、「命を奪いながら捨てている」という強いジレンマが現場には常に存在しています。

4. まとめ:奪わざるを得ない命を「未来の活力」へ

ニホンジカの増殖による害獣被害は、日本の里山が直面している極めて深刻な課題です。
しかし、捕獲されたシカをただの「害獣」として処分するのではなく、人間や愛犬のための「尊い命の恵み」として最後まで活かし切ることができれば、里山保全の持続可能な仕組みを作ることができます。

獣道ラボの挑戦

【現役ハンターが挑む】有害駆除の鹿肉を愛犬の健康へ届ける『獣道ラボ』の想い

三重・伊賀の里山で有害駆除に向き合う現役猟師が、なぜ「命の還元」としてペットフード事業を立ち上げたのか。プロジェクトの全貌はこちらをご覧ください。

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